＝小野田アサリを全国ブランドに＝

　小野田市の沖合で取れるアサリが大阪市場を中心に人気を呼び、「小野田
アサリ」の名前で浸透し始めている。粒が大きく、身が締まってうまみが濃
いのが特徴。
地元も日増しにこのブームにわき、さまざまな場で話題に。
来夏開催される山口きらら博に標準を合わせ、郷土料理や特産加工品の開発
が本格化しそうな気配も見せている。

　アサリ漁のシーズンは例年１１月中旬から５月中旬にかけて。
小野田漁協の潜水器実行組合（田平真二組合長、１１人）が、本山沖から西
側を漁場に、噴射水流で水深７−８メートルの海底を堀り起こしながら漁を
行っている。
　貝の形状は若干長細いだ円形。殻は薄く模様が美しい。深海で育つためか、
砂もはとんど含んでいない。
　全国的にアサリの生息分布が縮小している中、組合では漁場の制限や１日
当たり１隻９００キロという自主規一制を設け、１９９４年以降から次第に
水揚げを伸ばしてきた。９８年の水揚げ量は過去最高の1,296トン（前年比
２．４倍）＝市農林水産課調べ＝に達している。
　市の特産品でアサリは早くから注目されてきたが、日本放送出版協会の「
ＮＨＫ今日の健康」（３月号）や、日本テレビ系のバラエティー番組「どっ
ちの料理ショー」（２月２４日放映）で取り上げられたのをきっかけに、"日
本一のアサリ"として急速に話題となり始めた。
　テレビ放映直後に首相官邸から直接注文があったほか、各地から引き合い
が多くなり、最高級のもので１キロ当たり９００円の高値がつくなど市場価
格も平均２割程度上がったという。「小野田産」と食品販売コーナーに掲げ
た大型店や、メニューに書き加えたレストランも登場している。
　市生活改善実行グループ連絡協議会（花浴文子会長、４７人）は、たこ焼
きのタコの代わりにボイルしたアサリを使った「おのだあさり三映（ざんま
い）」を作り、つつじまつり（４月２３日）で４３０食分を完売した。
　露店は最高５０分待ちの行列で、中には下関市から情報を聞いてわざわざ
駆けつけた人や、「一つ買っておいしかったから」と、また並んで３つ買っ
た人もいるなど、白熱した人気ぶりだったという。
　しかし、こうした動きを歓迎してはかりもいられない。水揚げされるアサ
リの約９割が業者渡しで阪神方面などへ送られており、地元の市場に出回る
のはわずかなためだ。
　偽物も既に出回り始めており、小野田漁協では対策として「小野田アサリ
」の統一シールを張っているが、まだ足並みにばらつきがあるという。
　郷土料理として売り出すためには、旬の時期が２月中旬から４月中旬と限
定されていることも難しさを抱えている。
　庁内プロジェクトの市特産品開発事業検討委員会（榎坂昌歳委員長、８人）
は１９９８年度、料理や流通の専門家を招き、ボイルしたアサリを魚で作っ
たしょうゆに漬け込んで乾燥した「アサリのくし刺し」を試作したが、保存
方法に課題を残したため販売には至っていないという。
　ただ「小野田アサリを全国ブランドに」という空気は関係者に高まってお
り、同検討委では引き続き特産加工品の一つとしてアサリを考えていく方針。
市農林水産課も「乱獲を防ぎながら安定供給を目指すことが第一」としなが
ら、検討の視野を広げている。

＃「宇部時報」４月２８日付け記事より、宇部時報社の許可を得て転載しま
　した。